安養院へ御来山歓迎


第三番祇園山安養院田代寺(田代観音) 浄土宗
〒248-0007 神奈川県鎌倉市大町3−1−22 0467(22)0806
本尊●千手観世音菩薩  開基●田代信綱  開山●尊乗上人  創立●建久三年(一一九二)
住職●鳥居眞理
●詠歌●枯樹にも 花咲く誓ひ 田代寺 世を信綱の 跡ぞ久しき

武将信綱の信仰
 鎌倉の街道沿いに石垣を築き、数百株のつつじの植え込みを配した寺が安養院である。鎌倉には 「花の寺」が多いが、ここも花に風情あふれる霊場である。浄土宗名越派の根本道場の石標が左側 に、右側に宝永二年(一七〇五)江戸浜松町の山田喜右衞門が奉納した「田代観音板東三番」の石 柱が建っている。境内に入ると名越派の開祖尊観上人お手植えの樹齢七百年の槙の巨木が仰がれる。 その下に弘法大師御作と伝える日限地蔵尊が祀られており、近所の人たちが合掌している姿をよく 見かけるが、何かほっとした風景である。
 正面の観音堂は新しく、昭和三年の建立であり、内陣には阿弥陀如来、そのうしろに千手観音が安 置されている。「蓮肉に置いた裸足のふくらみや細くきれ長な眼尻には、人間に対する厳しい愛が ある」と評されているそのお姿に、これまで幾多の巡礼者が祈りをこめてきたことであろう。
 この寺の歴史はやや複准であるが、寺伝によれば源頼朝の家臣田代信綱は、入宋した「然大徳が 所持しておられた観音の画像を得て深く信心していた。軍陣に向かう時には必ず鎧の中に捧持して 祈念を怠らぬ有様であった。『源平盛衰記』には信綱が石橋山敗戦の折に頼朝を逃がさんと奮戦し た様子など「文武一撃の達者なり」と賞されたことが記されているが、戦場でたびたびの危難を逃 れ、数度の武勲をあらわすことのできたのも、すべてこの観世音のご利益と、その報恩のために建 久三年(一一九二)尊乗上人を開山として比企ヵ谷に白花山田代寺を創建した。本尊の千手観音は 鎌倉期制定の坂東第三番札所として尊信を集めた。
 増上寺所蔵の古文書で、享保年間(一七一六〜三六)に僧常元が採訪した「浄土門末寺院」の記 録の中に「相模・大町村・田代寺普門院」の項に「田代冠者信綱公室中示現之千手観音精舎建立。 又、実朝公坂東三十三番札所建立之時、第三番目ノ札所卜決定」とあるが、これは坂東札所制定の 歴史を知るうえできわめて貴重な資料といえる。

二寺合併の由来
 一方、嘉禄元年(一二二五)北條政子が夫、頼朝の菩提を弔うため、笹目ヵ谷に願行上人を閉山 として祇園山長楽寺を建立した。だがその年の七月に政子が死去し、この寺に祀られることになっ た。しかるに長楽寺は元弘三年(一三三三)鎌倉幕府滅亡の際、兵火によって焼け、同じく焼失し た名越の善導寺跡に移り、二寺は合併されて安養院となった。安養院はさらに延宝八年(一六八 〇)に火災にあったが、その際に田代寺をここに移して復興されたのである。
 ともあれ北條政子との深いかかわりによって、そのつど護られてきた寺で、本堂の背後に大小二 基の宝篋印塔があり、鎌倉最古のものとして重文に指定されている。大きい方が尊観上人の培、小 さい方が政子の墓であると伝える。苔むした安山岩の美しい形の培には「二位政子御法号安養院殿 如実妙観大禅定尼」と陰刻されている。本堂には尼僧姿の政子の木像があり、晩年の面影を偲ばせ る。病弱な大姫・乙姫の母として涙し、頼朝の死、頼家の非業の最後、実朝の悲劇まさに波乱のうち に生きた人、心から神仏を頼むことが多かったにちがいない。六十九歳の生涯であった。政子がこ このご本尊に祈って頼朝と結ばれた故事により「良縁」を祈る人が多い。
 ここには宝暦二年(一七五二)七月吉日の銘をもつ小鐘が伝存するが、それには「江戸八丁堀・ 女中講」とみえており、この寺の女性信者層の厚さを知ることができる。

●主な法要行事  新年初詣 春季彼岸会 五月二日八十八夜名灸 八月十日四万六千日 秋季彼岸会
●宿泊施設  なし
●拝観料  一〇〇円
●納経時間  午前八時〜午後四時三十分


安養院五観音の意義   安養院住職 鳥居眞理

 安養院には、次の五体の観音さまが祀られています。
 本尊千手観音=すべての衆生を千の慈眼をもってご覧になり、千の手を差しのべて摂化されま す。
 馬頭観音=その鋭い三眼をもった忿怒の相は耶悪を折伏せんがためで、馬頭を戴くのは大慈悲 を奔馬のように速やかに施すことを表わしています。
 准胝観音=七億の仏母として惑と業と苦の三障を除くことを主眼とされています。
 不空羂索観音=心念不空の羂索によって衆生をつり上げて救済し、彼岸に至らせようとの念願 を表わします。
 聖観音=左の手に未敷の蓮華を持ち、右手指先から生ずる微風によって開花しようとする姿を 示しています。
 これらの像を拝む時、蓮華が泥の中から生じて泥に染まらないように、現実苦悩の灼熱の世界 から、すがすがしい解脱の世界へと高められていく思いがいたします。

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